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2026.02.10
ベルテックスコラム事務局
【2026年版】年金問題の現状と課題|⽼後の不安を減らすために今できること
- 老後資金
- 資産形成
- 日本の現状
- 年金
「老後、年金だけで生活できるのだろうか」
年金の問題は、多くの人の心に潜む不安ではないでしょうか。
現在、国民年金の平均受給額は一か月あたり約5万8,000円、厚生年金を含めても約14万6,000円です。この金額で老後の生活を送るとすると、多くの方にとって十分とは言えないかもしれません。
さらに深刻なのは、少子高齢化の進行により将来の年金受給額が減少したり、受給開始年齢が引き上げられたりする可能性もあることです。
そのため老後の安心を手に入れるには、「公的年金だけに頼らない」という発想の転換が欠かせません。NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用した資産運用や、安定した収入が期待できる不動産投資など、自分に合った方法で老後資金を準備することが重要になってきます。
この記事では、2026年現在の年金制度の現状と課題についてまとめています。
年金の仕組みや最新の制度改正に触れつつ、少子高齢化の影響や現役世代の負担について整理しました。
また、老後資金を確保する方法として注目されている資産運用の制度や不動産投資についても解説します。
将来の不安を軽減するための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
【参考】厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」2024年12月発表
年金制度の概要
年金制度は、私たちの老後を支える重要な社会保障の柱です。
まずは年金制度の基本を理解し、漠然とした不安を具体的な対策に変えていきましょう。
年金制度とは?
年金制度は、国が運営する社会保障制度の一つで、老後の生活を支えるセーフティネットです。
日本の年金制度は「国民皆年金」の仕組みを採用しています。
基本的に20歳以上60歳未満のすべての人が何らかの公的年金に加入することとなっており、現役時代に保険料を納めることで、将来年金を受け取れます。
また、年金は老後の生活保障だけでなく、万が一の障害や死亡時にも給付があるため、現役世代の生活を守る重要な役割も果たしています。
年金制度は、現役世代が納めた保険料を、今の高齢者の給付に充てる「賦課方式」を採用しています。世代間で支え合う仕組みですが、現在は少子高齢化の影響で財源を確保することが難しい状況です。
なお、年金の加入者は以下の3つに区分されています。
第1号被保険者:自営業者、フリーランス、学生など(国民年金のみに加入)
第2号被保険者:会社員、公務員など(国民年金に加えて厚生年金にも加入)
第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者(専業主婦・主夫など)
年金制度は、社会の変化に合わせて定期的に見直されています。
直近の改正では、次の2つが変更されました。
- 受給開始年齢の選択肢拡大
- 厚生年金の適用範囲拡大
これらの改正は、多様な働き方や生き方に対応し、より柔軟な年金制度を目指すものです。
詳しく見ていきましょう。
【参考】厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」2025年4月16日現在
支給開始年齢の調整
2023年4月より公的年金の受給開始年齢について大きな変更がありました。
受給開始年齢の選択肢が拡大し、繰下げ受給の上限が70歳から75歳に延長されたのです。
受給開始時期が伸びたことで、受取額は最大で84%の増額が可能になりました。
例えば、65歳で月15万円の年金を受け取る予定の方が、75歳まで繰下げると月27.6万円(年間で約151万円増)が支給されます。
支給開始年齢の調整は、長寿化が進む現代において、ライフプランに合わせて年金の受け取り時期を選択する自由度が高まったと言えるでしょう。
年金の受給開始年齢の選択には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
|
|
メリット |
デメリット |
|---|---|---|
|
繰上げ受給(65歳より前に受け取る) |
年金を早く受け取れるため、生活が安定する |
受給額が減る(1カ月あたり0.4%の減額) |
|
繰下げ受給(65歳以降に受け取る) |
受給額が増える(1カ月あたり0.7%の増額) |
受け取るまでの期間、収入や貯蓄の確保が必要 |
受給開始時期は、健康状態や貯蓄状況など個人のライフプランによって大きく変わってきます。早めに受給したい方もいれば、できるだけ多くの年金を受け取りたい方もいるでしょう。
自分に合った選択をするためにも、早い段階からの情報収集と計画が大切です。
【参考】日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」2023年4月発表
厚生年金の適用拡大
もう一つの大きな改正が、厚生年金の適用範囲が拡大されたことです。これまで厚生年金に加入できる条件は比較的厳しく設定されていましたが、次のように段階的に緩和されています。
2022年10月まで : 従業員100人超の企業に適用
2024年10月から : 従業員50人超の企業まで拡大
また、「1年以上の雇用見込み」という条件も「2カ月以上」に短縮されました。
これまでパート・アルバイトの方は、一定の条件(週20時間以上の労働、月額賃金8.8万円以上など)を満たさないと厚生年金に加入できませんでしたが、今回の改正で多くの方が厚生年金に加入対象となっています。
なお、月収8.8万円の方が厚生年金に10年間加入すると、将来の年金額が年間約5.28万円増額されるという試算もあります。
長期的に見れば、老後生活の安定に大きく関わる可能性があるのです。
【参考】日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」2024年12月20日発表
年金制度における公的年金と私的年金
日本の年金制度は大きく「公的年金」と「私的年金」の2つに分けられています。
それぞれの違いや概要を解説します。
公的年金
公的年金は国が運営する年金制度で、20歳以上のすべての方が加入します。
加入対象者によって、以下の2種類に分かれています。
|
国民年金 |
自営業者やフリーランス、学生など、20歳以上60歳未満の方すべてが加入。定額の保険料を納める。 |
|---|---|
|
厚生年金 |
会社員や公務員が加入する制度。給与に応じて納める金額が変動し、将来受け取る年金額も変化する。 |
公的年金からは、主に3種類の給付を受けられます。
|
老齢年金 |
65歳から受給できる年金で、生涯にわたって支給される。老後の生活を支える資金となる。 |
|---|---|
|
障害年金 |
病気やケガで一定の障害状態になったときに支給され、働けなくなった方の生活を支える。 |
|
遺族年金 |
働き手や年金受給者が亡くなった場合に、残された家族の生活を支えるために支給される。 |
私的年金の種類と特徴
私的年金は、公的年金の上乗せ給付を目的とした制度です。
大きく分けると「①企業単位の年金」と「②個人単位の年金」の2つに分類されます。
それぞれの特徴や種類は次の通りです。
① 企業単位の年金(会社が用意する制度)
企業が従業員の退職後の生活を支えるために導入する年金です。運用方法によって、以下の3種類に分かれます。
- 確定給付企業年金(DB):企業があらかじめ年金額を約束し、運用リスクを負う制度です。従業員にとっては安定した給付が見込める反面、企業側の負担が大きくなることがあります。
- 確定拠出年金(DC):企業が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する制度です。給付額は運用成績次第で変動するため、従業員自身の運用判断が重要になります。
- 厚生年金基金:企業が基金を設立し、厚生年金の一部を国に代わって運用・管理しながら、上乗せ給付を行う制度です。掛金は従業員と会社側で負担し合います。
② 個人単位の年金(任意で加入する制度)
個人が将来の年金受給額を増やすために自ら加入する年金です。節税メリットがあり、老後の資産形成に役立ちます。個人単位の年金には、次のようなものがあります。
- 国民年金基金:主に自営業者やフリーランス向けの制度です。掛金額や給付型を選択でき、支払った掛金は所得控除の対象となります。
- iDeCo(イデコ):個人型確定拠出年金の愛称です。自ら資産を運用し、掛金は全額所得控除となる税制優遇があります。運用次第で将来の給付額を増やせます。
【参考】厚生労働省「私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)」2025年4月18日現在
年金問題の現状
日本の年金制度は多くの国民の老後を支える大切な仕組みですが、様々な課題に直面しています。
現在の年金制度が抱える問題点を、詳しく見ていきましょう。
少子高齢化による現役世代の負担額の増加
少子高齢化とは、出生率低下による子どもの減少と65歳以上の高齢者の増加が同時に進行する現象です。
日本の総人口に占める高齢者の割合は約30%に達しており、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。日々生活していても、このような社会構造の大きな変化を実感している方も多いのではないでしょうか。
日本の年金制度は「賦課方式」を採用しており、現役世代が納めた保険料をその時の高齢者に給付しています。そのため、高齢者が増加し現役世代が減少すると、1人当たりの負担額が増えていくのです。
具体的に負担の変化を数字で見てみましょう。
1950年時点では、65歳以上の高齢者1人を10人以上の現役世代で支えていました。ところが、2025年には現役世代1.9人で高齢者1人を支える構造になると推測されています。
わずか75年ほどの間に、支える側と支えられる側の比率が劇的に変わっているのです。
保険料負担額の推移も見逃せません。
国民年金の保険料は2015年時点では15,520円/月でしたが、2025年は17,510円/月となっています。直近10年間でひと月当たり1,990円増加し、負担が重くなっていると言えるでしょう。
今後も賦課方式で制度が続けば、年金負担は一層現役世代の肩にのしかかる重荷となる可能性があります。
【参考】内閣府「経済財政白書/経済白書第1節 高齢化・人口減少の意味」2003年10月24日発表
【参考】厚生労働省「我が国の人口について」2025年4月16日現在
【参考】国民年金機構「国民年金保険料の変遷」2025年4月1日発表
令和7年版(2025年)の人口推計データ
日本の総人口は2025年(令和7年)3月1日現在1億2,344万人で、前年同月に比べ56万人減少しました。
減少幅は東京都の中規模区の人口に当たり、日本社会の構造変化の大きさを物語っています。
続いて、年齢区分別の人数や割合を2024年10月時点の最新データを基に見てみると、65歳以上の人口は、3,624万3千人で、前年同月に比べ1万7千人増加しています。人口に占める割合は29.3%です。
一方、15歳未満の人口は1,383万人で、前年同月に比べ34万3千人減少しました。人口に占める割合は11.1%です。
高齢者の割合が14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と定義されます。日本は早くも2007年に「超高齢社会」に突入し今や基準をはるかに上回っています。
特に気になるのは、生産年齢人口(15〜64歳)の減少です。2025年の生産年齢人口は約7,300万人と推計されており、ピーク時である1995年の約8,700万人と比べて約1,400万人減っています。現役世代の減少は年金制度の根幹を揺るがす問題です。
人口構造の変化がもたらす影響は他にもあります。
例えば、高齢者の割合増加により介護や医療の需要が大きくなることで、社会保障費の財源確保が深刻な課題となります。また、労働人口が減ると経済成長が鈍化し、賃金の伸び悩みが続く可能性も指摘されています。
このような要因が複合的に作用するため、年金制度の持続可能性に疑問符が付けられているのです。
さらに、地域による高齢化の差も顕著になっています。高齢化率は、都市部よりも地方の方が高く、一部の地域では40%を超える自治体も出現しています。この地域格差は、将来の年金制度設計においても考慮すべき要素となるでしょう。
【引用】総務省統計局「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)」2024年4月12日公表
【参考】総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月確定値、2025年(令和7年)3月概算値」2025年3月19日公表
年金支給額の減少の可能性
高齢者が増加し現役世代が減少することにより、年金財源の不足が懸念されています。2024年の財政検証では、経済成長率や出生率が低下することから、将来的な給付水準が低下すると予測されました。
経済成長や出生率の低迷は賃金上昇率の伸び悩みをもたらし、年金原資の担い手である生産人口が減ることから年金の算定基準にも影響を与えるでしょう。
また直接的な支給額の減少だけでなく、受給開始年齢の引き上げによる生涯受給総額の減少も考えられます。
さらに、物価上昇についても見過ごせません。
名目上の年金額が同じでも、物価が上がれば購買力は低下します。例えば、2%の物価上昇が10年続けば、同じ金額の年金でも実質的な価値は約18%も目減りしてしまうのです。
2022年以降の世界的なインフレ傾向も、年金受給者の生活に大きな影響を与えています。
【参考】厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」2024年7月発表
年金問題の今後の見通し
現在の年金制度が抱える課題を踏まえると、将来の見通しについても不安要素が多く存在します。
人口の変化や社会保障制度改正の影響で、年金制度はどのように変化していくのでしょうか。今後の予測を解説します。
現役世代の負担増
内閣府の資料によると、20年後の2045年には日本の総人口は1億880万人まで減少し、さらに35年後の2060年には1億人を下回ることが予測されています。
人口減少と同時に少子高齢化はより深刻化し、年金制度への影響も避けられない状況となっています。
特に心配されるのは、年金の支え手と受給者のバランスです。2045年には現役世代1.5人で高齢者1人を支える形になるという試算もあり、現役世代の負担はさらに大きくなる一方です。
若い世代にとっては、定年までの数十年にわたって高い年金保険料の負担を強いられる可能性があります。
同時に、日本の経済成長が停滞し収入が上がらないまま社会保険料が増加すれば、手取り収入である可処分所得が減少することも考えられます。
生活費や住宅ローン、子育て費用などの支出が変わらない中での可処分所得の減少は、現役世代の生活に大きな影響を与えそうです。
このような状況に対して、政府はいくつかの対策を検討しています。
- 年金受給開始年齢のさらなる引き上げ
- 保険料を納める期間の延長
- 私的年金の普及促進
これらの対策が導入されれば、老後の資金計画を見直す必要が出てくるでしょう。
年金制度そのものが破綻するという極端な事態にはならないまでも、現行の水準や時期に年金を受け取れるとは限りません。
特に今の30代、40代の方は、公的年金に過度に依存しない老後設計が求められます。
【引用】内閣府「令和5年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」2024年6月21日発表
【参考】内閣府「高齢化の現状と将来像」 2025年7月14日現在
【参考】内閣府「将来推計人口でみる50年後の日本」2025年7月14日現在
社会保険料の増加傾向
2025年度の厚生年金保険料率は18.3%です。2000年代の約13%と比較すると大幅な上昇であり、わずか20年で5ポイント以上も上昇したことになります。
現在の制度では、厚生年金の保険料率を18.3%で固定することになっていますが、年金制度の持続可能性を考えると、今後保険料率の引き上げが必要となる可能性も否定できません。
さらに、年金以外の社会保険料についても増加傾向です。
健康保険の料率は国民皆保険が始まった1961年時点では6.3%でしたが、現在は10.0%前後で推移しています。
人口減少と高齢化が進む中で、健康保険制度を維持するための改正が実施されれば、保険料はさらに上昇する可能性があります。
特に高齢者の医療費が増加する中で、現役世代の負担増加は避けられない状況です。
介護保険料の料率も上昇しています。
制度開始当初の2000年は0.60%だったのに対し、現在は1.59%です。料率は25年間で2.6倍にまで上昇しており、今後もさらに上がると予測されています。
団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、介護需要がさらに高まることが予想されるためです。
社会保険料は労働者だけでなく企業も負担しているため、企業にとって人件費の圧迫要因となります。その結果、企業は正社員採用を抑制し、社会保険料負担の少ない非正規雇用の増加や賃金抑制の流れが進む可能性も考えられます。
社会保険料負担増加による雇用環境の変化は、労働環境や賃金の伸びにも悪影響を及ぼし、結果として年金保険料の原資となる賃金総額の伸び悩みにつながるという悪循環を生む恐れもあるのです。
【参考】日本年金機構「厚生年金保険料率の変遷」 2025年7月14日現在
【参考】全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」 2025年7月14日現在
支給額の減額が進行
国民年金の満額支給額は月額約6万8,000円で、ここ10年ほどは横ばいで推移しています。しかし人口減少によって負担する人の数が減れば、今後もらえる年金は実質的に減っていくことが避けられません。
なお、将来の年金財源を確保するために、物価や賃金が上昇しても少子高齢化の進行度合いに応じて年金額の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」という制度が2004年から導入されています。
例えば、物価が2%上昇しても、マクロ経済スライドの調整によって年金額の上昇は0.5%に抑えられるといった形で機能します。
当初このマクロ経済スライドは2023年頃に終了する予定でしたが、最新の財政検証では国民年金の調整が2057年まで続く可能性が示されています。当初の想定よりも30年以上調整が継続されれば、現在の30代、40代の方は老後長い期間にわたってマクロ経済スライドの影響を受けることになります。
さらに、マクロ経済スライドのかけ方をより抑制する方向に変える案も検討されており、年金額は現状よりも減る可能性も見込まれます。
【参考】厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」2025年1月発表
増税
年金を含む社会保障費の増加によって、財源を確保するための増税も避けられない状況となっています。
特に注目されるのは、消費税率のさらなる引き上げです。2019年に10%へ引き上げられた消費税ですが、欧米諸国の税率である15〜25%程度と比較するとまだ低く、将来的には同じ水準の20%前後まで引き上げられる可能性も指摘されています。
消費税以外にも、所得税や資産税の見直しが検討されており、特に高所得層への増税が議論されています。相続税や贈与税の改正も進められており、世代間の資産移転や資産形成への影響が拡大する可能性も考えられます。
特に相続税の基礎控除額の引き下げが実施されれば、一般的な家庭でも相続税の課税対象となるケースが増えるでしょう。
増税によって消費税率が上がると消費が低迷し、景気悪化につながる懸念もあります。実際、2019年の消費税率引き上げ後には消費の落ち込みが見られ、さらにコロナ禍も重なって経済に大きな影響を与えました。
将来的な増税が景気後退をもたらせば、税収減少という皮肉な結果を招く可能性もあります。
また「取れるところから取る」という税制改革が進むと、資産形成途上の世代の生活負担が増すことになります。社会保険料の負担増と増税の両方に直面することになり、可処分所得のさらなる減少を招く恐れがあるでしょう。
結果として消費の低迷や少子化の加速など、社会全体に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
自分で用意する必要性の増加
ここまで見てきたように、年金をめぐる環境は厳しさを増しており、老後資金の準備が欠かせない時代になっています。「公的年金だけでは足りない」という認識は広く浸透しつつあり、自助努力によって資金を確保する必要性が高まっています。
なお資産形成を支援するため、国も様々な制度を整備しています。
例えばiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)は、税制優遇を通じて老後資金の確保を支援する制度として注目され、利用者も年々増加しています。特に2024年からスタートした新NISA制度は、非課税投資枠の拡大や恒久化により、より使いやすい制度となりました。
また、企業型確定拠出年金の普及も進み、働き方や退職金制度の選択肢も広がっています。
老後資金の準備には、多様な資産運用手段を活用することが重要です。株式や債券、投資信託といった金融商品だけでなく、不動産投資など実物資産への投資も選択肢となります。
特に長期の資産形成では、インフレに強い実物資産や株式などへの分散投資が効果的と言われています。
退職金についても、一括受け取りか分割受給かの選択や、受け取った退職金の運用方法など、慎重に検討する必要があります。税金面での影響も考慮しながら、自分に合った選択をすることが大切です。
このように、公的年金制度の先行きが不透明な中で、私たち一人ひとりが老後の生活に向けて主体的に準備することが重要になってきています。次の章では、具体的にどのような対策が効果的なのか、詳しく見ていきましょう。
今からできる年金問題の対策
年金問題に直面する現代では、公的年金だけに頼らない資産形成が重要になっています。
ここでは、さまざまな対策方法とその特徴を説明し、将来に向けた資金準備の第一歩となる情報をお伝えします。
それぞれの制度や手法を理解し、自分に合った選択をする際の参考にしてみてください。
資産形成
老後資金の準備は、早いうちから投資によってお金に働いてもらい資産を形成しておくことが大切です。
早期に開始することで選択肢の幅が広がり、運用経験も積むことができます。資産によっては、長期運用による複利効果も大きく見込めるでしょう。
「貯める」から「増やす」へと発想を転換し、効率的な資産形成を目指すことが将来の安心に繋がります。
続いて、主な資産形成の方法をいくつかご紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは老後の資金作りに特化した制度で、3つの税制優遇があります。
1.掛金が所得控除される
毎月の掛金が全額所得控除の対象となり、住民税や所得税の負担が軽減されます。例えば、年間24万円をiDeCoに拠出すると、所得税率20%の方は約4.8万円の節税になります。
2.運用益が非課税扱いになる
運用益は非課税となるため、複利効果を最大限活用できます。通常の投資であれば利益に税金がかかりますが、iDeCoではその分も再投資に回せるため、長期間の運用で大きな差が生まれます。
3.受け取り時にも税控除が適用される
受け取り時も「退職所得控除」や「公的年金等控除」があり、税負担が抑えられます。一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されるため、状況に応じた受取方法を選択できます。
なおiDeCoは、原則60歳まで資金を引き出せません。引き出しの制限があるのは一見デメリットのように感じますが、強制的に老後資金を確保できるという点ではメリットとも言えます。
ただし、短期的な資金需要には対応できないため、生活費とは別に積み立てることが大切です。
加入できる年齢は60歳未満ですが、制度改正により条件に該当する人は65歳まで延長されています。
掛金の上限は職業によって異なり、会社員や公務員は最大月額2万3,000円、自営業者は月額6万8,000円です。
NISA(少額投資非課税制度)
NISAは投資による利益を非課税で得られる制度です。
通常、投資の売買益や分配金にはおよそ20%の税金がかかりますが、NISA口座での運用は税金が課されません。株式や投資信託による利益を最大限に活かせる制度として、活用価値が非常に高いと言えるでしょう。
特に「つみたてNISA」は、少額から毎月自動的に投資できるため、着実な資産形成が可能です。定期的に固定額を投資することで、相場の上げ下げに左右されにくい「ドルコスト平均法」が自然と実現できることから、初心者でも手軽に分散投資を始められます。値動きの激しい銘柄であっても、コツコツと積み立てることで平均取得単価を抑えられるのです。
NISAは2024年の制度改定により、使い勝手が大きく向上しました。
従来は「一般NISA」と「つみたてNISA」が別枠で設けられていましたが、新制度では併用できるようになっています。年間の投資枠も拡大し、限度額に達するまで非課税で投資を続けられる恒久的な仕組みも導入されました。
具体的には、成長投資枠で年間360万円、つみたて投資枠で年間120万円の投資が可能となり、時間をかけて大きな非課税の恩恵を受けられます。
NISAの大きな特徴は、iDeCoと異なり、いつでも資金を引き出せる点です。将来のライフイベントに対応しやすく、柔軟性の高い資産形成が可能です。
不動産投資
不動産投資は、老後資金対策として優れた方法の一つです。
大きな魅力は、家賃収入を継続的に得られる点にあります。株式のように大きな価格変動がなく、比較的安定した収益が長期にわたって見込めるため、老後の生活を支える収入源として最適です。
また、不動産はインフレに強いという特性があります。物価上昇時は家賃も伴って上がる傾向があるため、資産価値が維持されやすく年金の実質価値低下に備える有効な方法と言えるでしょう。
他にも不動産投資は、少ない資金で大きなリターンを得る「レバレッジ効果」を活用できます。金融機関の融資を活用することで、自己資金の何倍もの資産を運用できるため、効率的な資産形成が可能です。
例えば、1,000万円の自己資金と2,000万円の融資で3,000万円の物件を購入すれば、家賃収入で住宅ローンを返済しながら資産を築けます。
税制面でも不動産投資は優遇されています。減価償却や経費計上による節税効果があり、本業の給与所得とあわせた所得税の負担を軽減できるのです。特に高所得の方にとっては、効果的な節税対策にもなるでしょう。
さらに、立地の良い物件を取得すれば、資産価値の維持・向上も期待できます。不動産は実物資産であるため、適切に管理や運用をすることで価値を保ちやすく、次世代への資産継承も視野に入れた長期的な資産形成が見込めます。
本業の給与に家賃収入を加えることで、収入源のリスク分散ができる点も注目されています。万が一の失業や収入減少時にも経済的な安定を図る手段として、会社員や公務員の方にも人気です。
物件選びや管理会社の選定などは、適切な知識と判断が求められますが、しっかりと準備をすれば、老後の安定した収入源として大きな力となるでしょう。
NISAと不動産投資を組み合わせて対策した場合のシミュレーション
老後資金対策として「NISA」の複利効果と「不動産投資」のレバレッジ効果を組み合わせた運用例をご紹介します。
手持ちの資金はNISAで着実に増やしつつ、金融機関からの融資を活用し不動産投資を行うことで、少ない自己資金でも効率的に資産形成ができる方法です。
以下は、35歳・年収500万円の会社員Aさんのケースです。
【不動産投資の概要】
- 築10年の中古区分マンション(1K・30㎡)
- 購入価格: 1,200万円
- 頭金: 200万円
- ローン: 1,000万円(金利1.5%、35年返済)
- 月々のローン返済額: 約31,000円
- 家賃収入: 月額65,000円
- 諸経費(管理費、修繕積立金、保険、税金など): 月額15,000円
【不動産投資の月間収支】
- 月間収入: 65,000円(家賃)
- 月間支出: 46,000円(ローン返済31,000円+諸経費15,000円)
- 月間キャッシュフロー: +19,000円(年間で約22.8万円の不労所得)
【NISAの運用計画】
- NISA積立額: 月額25,000円
- 想定利回り: 年3%(複利)
- 投資期間: 35年間(35歳〜70歳)
【35年後の資産形成予測】
不動産資産:
物件価値: 当初の購入価格の70%程度と仮定すると約840万円
35年間の不動産からの純収益: 約798万円(月18,000円×12ヶ月×35年)
NISA投資:
35年間の積立総額: 約1,050万円(月25,000円×12ヶ月×35年)
35年後の運用資産: 約1,800万円(年利3%の複利計算)
【合計資産形成効果】
不動産物件価値: 約840万円
不動産純収益累計: 約798万円
NISA運用資産: 約1,800万円
総資産形成効果: 約3,438万円
このシミュレーションでは、当初の投資元本(不動産頭金200万円+NISA積立1,050万円=1,250万円)の約2.7倍の資産形成に成功しました。
さらに、35年後以降も家賃収入が継続して得られるため、ローン完済後は毎月約50,000円の安定した収入を確保できます。
NISAと不動産投資を組み合わせた運用の大きなメリットは、リスク分散です。NISAでは主に株式や投資信託などの金融資産に投資することで市場の成長を享受し、不動産投資では実物資産を保有することでインフレリスクにも対応できます。
また、不動産投資で生じるキャッシュフローは、万が一の相場下落時にも安定した収入として頼りになります。
このようにNISAと不動産投資を賢く組み合わせることで、月々の負担を最小限に抑えながら、リスクを分散しつつ約3,000万円以上の資産を形成することが可能です。
老後資金対策として検討する価値のある戦略と言えるでしょう。
貯蓄
投資に不安を感じる方や安全性を重視したい方は、まずは貯蓄から始めましょう。貯蓄があまりできていない人は、毎月の収入から一定額を貯蓄へ回す習慣をつけてみてください。給与が入ったら、決めた金額を別の口座に移す「先取り貯蓄」の仕組みを取り入れると効果的です。
まずは無理のない範囲で定期的な貯蓄習慣を身につけることが、将来の資産形成の土台となります。
貯蓄の基本となるのが定期預金です。定期預金は安全性の高い資産形成手段として、次のようなメリットがあります。
- 元本保証があるため、リスクを抑えて資産を守れる
- 事前に金利や運用期間が決まっているため、将来の資金計画を立てやすい
- 預入期間を短期・中期・長期から選べるため、ライフプランに合わせた運用が可能
- 万が一金融機関が破綻しても、1,000万円までの元本と利息が保証される預金保険制度(ペイオフ)がある
ただし、現在の低金利環境では定期預金だけでのリターンは限定的です。2025年現在、メガバンクの1年もの定期預金金利は0.275%程度と低水準に留まっています。
定期預金は安全性が高い反面、資産増加の効果は限られるため、他の運用手段と組み合わせて活用することが重要です。
例えば、「緊急資金として1年分の生活費を定期預金で確保し、余裕資金をNISAなどで運用する」といった組み合わせが効果的でしょう。
年金額を増やす
年金対策として、受給額そのものを増やす方法もあります。
主な方法は次の3つです。
- 年金の繰り下げ受給
- 付加年金制度の活用
- 私的年金の利用
具体的に見ていきましょう。
年金の繰下げ受給
年金は受給開始時期を遅らせることで、受取額を増やせます。
「繰下げ受給」は1カ月繰下げるごとに0.7%増額され、1年で8.4%増やすことが可能です。
繰り下げができる上限の75歳まで繰下げると、65歳受給開始時と比べて年金額は84%増加します。65歳時点で月額15万円の年金が、75歳では月額27.6万円になる計算です。
高齢者の就労が増加する現代では、65歳以降も働く人が増えています。そのため、収入があるうちは年金の受給を繰下げる選択を検討する価値があるでしょう。
特に健康で長生きする可能性が高い方にとっては、後期高齢者以降の生活水準を高める有効な手段となります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げは、個別に選択が可能です。例えば、老齢厚生年金のみ65歳から受給し、老齢基礎年金を75歳まで繰下げることもできます。
このような柔軟性を活かして、自分のライフプランに合わせた受給設計を考えることもできます。
繰下げ受給を検討する際は、自身の健康状態や家族の寿命傾向、他の収入源の有無などを総合的に考慮することが大切です。ライフプランに合わせて柔軟に受給開始時期を決めることで、老後の経済的安定を図りましょう。
付加年金制度の活用
付加年金制度は、国民年金第1号被保険者の方(自営業者、フリーランス、学生など)が利用できる制度です。
国民年金保険料に加えて月額400円を追加負担することで、受給時に「200円×納付月数」の年金が上乗せされます。30年間加入すれば、144,000円の保険料負担で年72,000円の年金増額です。単純計算すると約2年で元が取れる計算となり、投資効率が非常に高いとされています。
定額で確実にリターンが得られるため、自営業者・フリーランスの方にとって有利な制度と言えるでしょう。
付加年金は加入期間が長いほど受給額を増やせるため、若い時期からの加入がより大きなメリットをもたらします。例えば、25歳から60歳まで35年間加入した場合、168,000円の負担で年額84,000円の年金が増加します。
仮に65歳から85歳まで受給すると、総額168万円のリターンになるのです。
手軽に年金を増やせる確実な方法として、国民年金第1号被保険者の方は検討してみても良いでしょう。
私的年金の利用
生命保険会社や金融機関の個人年金保険も、老後の収入を増やす有効な方法です。
個人年金保険は、一時金・終身年金・確定年金など多様な受取方法を選べるため、自身のライフプランに合わせて設計できます。
また保険料は「一般生命保険料控除」または「個人年金保険料控除」の対象となり、税制優遇があるのも魅力です。
個人年金保険には、大きく分けて定額型と変額型の2種類があります。定額型は、あらかじめ決められた利率で運用され、将来受け取る年金額が契約時に確定します。一方、変額型は運用成果に応じて受取額が変動するため、高いリターンが期待できる反面、元本割れのリスクもあります。
個人年金保険は、中途解約すると支払った保険料より解約返戻金が少なくなる可能性もあります。
特に契約初期は返戻金が低くなる傾向があるため、長期間継続できる保険を選ぶことが重要です。
払い込みを続けられる保険料であるかを十分に検討した上で、老後の収入を補完する手段として活用することをお勧めします。
まとめ
この記事では、年金制度の現状と今後の見通しについて解説してきました。
将来年金は少子高齢化に伴って、給付水準の低下や受給開始年齢の引き上げとなる可能性があります。
また、社会保険料の増加や増税など、現役世代の負担が大きくなることも想定されます。
このような状況に備えるため、早い段階から自助努力で資産形成を行う必要性はますます高まるでしょう。
年金問題は「遠い先のこと」ではなく、今から対策を始めるべき課題です。公的年金だけに頼らず、早い段階から将来の資産準備を検討し行動に移しましょう。
資産形成の方法としては、NISAやiDeCoの活用や不動産投資、付加年金制度や私的年金の活用など、様々な選択肢があることを紹介しました。
特に不動産投資は、安定した収入を得られる有効な選択肢の一つです。正しい知識と戦略を持って取り組めば、老後の収入源となる可能性を秘めています。
ベルテックスでは、不動産投資による資産形成についての無料セミナーを定期的に開催しています。ご自宅からオンラインで気軽にご参加いただけますので、資産形成に関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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2026.02.10
ベルテックスコラム事務局
【2026年版】年金問題の現状と課題|⽼後の不安を減らすために今できること
- 老後資金
- 資産形成
- 日本の現状
- 年金
「老後、年金だけで生活できるのだろうか」
年金の問題は、多くの人の心に潜む不安ではないでしょうか。
現在、国民年金の平均受給額は一か月あたり約5万8,000円、厚生年金を含めても約14万6,000円です。この金額で老後の生活を送るとすると、多くの方にとって十分とは言えないかもしれません。
さらに深刻なのは、少子高齢化の進行により将来の年金受給額が減少したり、受給開始年齢が引き上げられたりする可能性もあることです。
そのため老後の安心を手に入れるには、「公的年金だけに頼らない」という発想の転換が欠かせません。NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用した資産運用や、安定した収入が期待できる不動産投資など、自分に合った方法で老後資金を準備することが重要になってきます。
この記事では、2026年現在の年金制度の現状と課題についてまとめています。
年金の仕組みや最新の制度改正に触れつつ、少子高齢化の影響や現役世代の負担について整理しました。
また、老後資金を確保する方法として注目されている資産運用の制度や不動産投資についても解説します。
将来の不安を軽減するための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
【参考】厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」2024年12月発表
年金制度の概要
年金制度は、私たちの老後を支える重要な社会保障の柱です。
まずは年金制度の基本を理解し、漠然とした不安を具体的な対策に変えていきましょう。
年金制度とは?
年金制度は、国が運営する社会保障制度の一つで、老後の生活を支えるセーフティネットです。
日本の年金制度は「国民皆年金」の仕組みを採用しています。
基本的に20歳以上60歳未満のすべての人が何らかの公的年金に加入することとなっており、現役時代に保険料を納めることで、将来年金を受け取れます。
また、年金は老後の生活保障だけでなく、万が一の障害や死亡時にも給付があるため、現役世代の生活を守る重要な役割も果たしています。
年金制度は、現役世代が納めた保険料を、今の高齢者の給付に充てる「賦課方式」を採用しています。世代間で支え合う仕組みですが、現在は少子高齢化の影響で財源を確保することが難しい状況です。
なお、年金の加入者は以下の3つに区分されています。
第1号被保険者:自営業者、フリーランス、学生など(国民年金のみに加入)
第2号被保険者:会社員、公務員など(国民年金に加えて厚生年金にも加入)
第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者(専業主婦・主夫など)
年金制度は、社会の変化に合わせて定期的に見直されています。
直近の改正では、次の2つが変更されました。
- 受給開始年齢の選択肢拡大
- 厚生年金の適用範囲拡大
これらの改正は、多様な働き方や生き方に対応し、より柔軟な年金制度を目指すものです。
詳しく見ていきましょう。
【参考】厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」2025年4月16日現在
支給開始年齢の調整
2023年4月より公的年金の受給開始年齢について大きな変更がありました。
受給開始年齢の選択肢が拡大し、繰下げ受給の上限が70歳から75歳に延長されたのです。
受給開始時期が伸びたことで、受取額は最大で84%の増額が可能になりました。
例えば、65歳で月15万円の年金を受け取る予定の方が、75歳まで繰下げると月27.6万円(年間で約151万円増)が支給されます。
支給開始年齢の調整は、長寿化が進む現代において、ライフプランに合わせて年金の受け取り時期を選択する自由度が高まったと言えるでしょう。
年金の受給開始年齢の選択には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
|
|
メリット |
デメリット |
|---|---|---|
|
繰上げ受給(65歳より前に受け取る) |
年金を早く受け取れるため、生活が安定する |
受給額が減る(1カ月あたり0.4%の減額) |
|
繰下げ受給(65歳以降に受け取る) |
受給額が増える(1カ月あたり0.7%の増額) |
受け取るまでの期間、収入や貯蓄の確保が必要 |
受給開始時期は、健康状態や貯蓄状況など個人のライフプランによって大きく変わってきます。早めに受給したい方もいれば、できるだけ多くの年金を受け取りたい方もいるでしょう。
自分に合った選択をするためにも、早い段階からの情報収集と計画が大切です。
【参考】日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」2023年4月発表
厚生年金の適用拡大
もう一つの大きな改正が、厚生年金の適用範囲が拡大されたことです。これまで厚生年金に加入できる条件は比較的厳しく設定されていましたが、次のように段階的に緩和されています。
2022年10月まで : 従業員100人超の企業に適用
2024年10月から : 従業員50人超の企業まで拡大
また、「1年以上の雇用見込み」という条件も「2カ月以上」に短縮されました。
これまでパート・アルバイトの方は、一定の条件(週20時間以上の労働、月額賃金8.8万円以上など)を満たさないと厚生年金に加入できませんでしたが、今回の改正で多くの方が厚生年金に加入対象となっています。
なお、月収8.8万円の方が厚生年金に10年間加入すると、将来の年金額が年間約5.28万円増額されるという試算もあります。
長期的に見れば、老後生活の安定に大きく関わる可能性があるのです。
【参考】日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」2024年12月20日発表
年金制度における公的年金と私的年金
日本の年金制度は大きく「公的年金」と「私的年金」の2つに分けられています。
それぞれの違いや概要を解説します。
公的年金
公的年金は国が運営する年金制度で、20歳以上のすべての方が加入します。
加入対象者によって、以下の2種類に分かれています。
|
国民年金 |
自営業者やフリーランス、学生など、20歳以上60歳未満の方すべてが加入。定額の保険料を納める。 |
|---|---|
|
厚生年金 |
会社員や公務員が加入する制度。給与に応じて納める金額が変動し、将来受け取る年金額も変化する。 |
公的年金からは、主に3種類の給付を受けられます。
|
老齢年金 |
65歳から受給できる年金で、生涯にわたって支給される。老後の生活を支える資金となる。 |
|---|---|
|
障害年金 |
病気やケガで一定の障害状態になったときに支給され、働けなくなった方の生活を支える。 |
|
遺族年金 |
働き手や年金受給者が亡くなった場合に、残された家族の生活を支えるために支給される。 |
私的年金の種類と特徴
私的年金は、公的年金の上乗せ給付を目的とした制度です。
大きく分けると「①企業単位の年金」と「②個人単位の年金」の2つに分類されます。
それぞれの特徴や種類は次の通りです。
① 企業単位の年金(会社が用意する制度)
企業が従業員の退職後の生活を支えるために導入する年金です。運用方法によって、以下の3種類に分かれます。
- 確定給付企業年金(DB):企業があらかじめ年金額を約束し、運用リスクを負う制度です。従業員にとっては安定した給付が見込める反面、企業側の負担が大きくなることがあります。
- 確定拠出年金(DC):企業が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する制度です。給付額は運用成績次第で変動するため、従業員自身の運用判断が重要になります。
- 厚生年金基金:企業が基金を設立し、厚生年金の一部を国に代わって運用・管理しながら、上乗せ給付を行う制度です。掛金は従業員と会社側で負担し合います。
② 個人単位の年金(任意で加入する制度)
個人が将来の年金受給額を増やすために自ら加入する年金です。節税メリットがあり、老後の資産形成に役立ちます。個人単位の年金には、次のようなものがあります。
- 国民年金基金:主に自営業者やフリーランス向けの制度です。掛金額や給付型を選択でき、支払った掛金は所得控除の対象となります。
- iDeCo(イデコ):個人型確定拠出年金の愛称です。自ら資産を運用し、掛金は全額所得控除となる税制優遇があります。運用次第で将来の給付額を増やせます。
【参考】厚生労働省「私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)」2025年4月18日現在
年金問題の現状
日本の年金制度は多くの国民の老後を支える大切な仕組みですが、様々な課題に直面しています。
現在の年金制度が抱える問題点を、詳しく見ていきましょう。
少子高齢化による現役世代の負担額の増加
少子高齢化とは、出生率低下による子どもの減少と65歳以上の高齢者の増加が同時に進行する現象です。
日本の総人口に占める高齢者の割合は約30%に達しており、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。日々生活していても、このような社会構造の大きな変化を実感している方も多いのではないでしょうか。
日本の年金制度は「賦課方式」を採用しており、現役世代が納めた保険料をその時の高齢者に給付しています。そのため、高齢者が増加し現役世代が減少すると、1人当たりの負担額が増えていくのです。
具体的に負担の変化を数字で見てみましょう。
1950年時点では、65歳以上の高齢者1人を10人以上の現役世代で支えていました。ところが、2025年には現役世代1.9人で高齢者1人を支える構造になると推測されています。
わずか75年ほどの間に、支える側と支えられる側の比率が劇的に変わっているのです。
保険料負担額の推移も見逃せません。
国民年金の保険料は2015年時点では15,520円/月でしたが、2025年は17,510円/月となっています。直近10年間でひと月当たり1,990円増加し、負担が重くなっていると言えるでしょう。
今後も賦課方式で制度が続けば、年金負担は一層現役世代の肩にのしかかる重荷となる可能性があります。
【参考】内閣府「経済財政白書/経済白書第1節 高齢化・人口減少の意味」2003年10月24日発表
【参考】厚生労働省「我が国の人口について」2025年4月16日現在
【参考】国民年金機構「国民年金保険料の変遷」2025年4月1日発表
令和7年版(2025年)の人口推計データ
日本の総人口は2025年(令和7年)3月1日現在1億2,344万人で、前年同月に比べ56万人減少しました。
減少幅は東京都の中規模区の人口に当たり、日本社会の構造変化の大きさを物語っています。
続いて、年齢区分別の人数や割合を2024年10月時点の最新データを基に見てみると、65歳以上の人口は、3,624万3千人で、前年同月に比べ1万7千人増加しています。人口に占める割合は29.3%です。
一方、15歳未満の人口は1,383万人で、前年同月に比べ34万3千人減少しました。人口に占める割合は11.1%です。
高齢者の割合が14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と定義されます。日本は早くも2007年に「超高齢社会」に突入し今や基準をはるかに上回っています。
特に気になるのは、生産年齢人口(15〜64歳)の減少です。2025年の生産年齢人口は約7,300万人と推計されており、ピーク時である1995年の約8,700万人と比べて約1,400万人減っています。現役世代の減少は年金制度の根幹を揺るがす問題です。
人口構造の変化がもたらす影響は他にもあります。
例えば、高齢者の割合増加により介護や医療の需要が大きくなることで、社会保障費の財源確保が深刻な課題となります。また、労働人口が減ると経済成長が鈍化し、賃金の伸び悩みが続く可能性も指摘されています。
このような要因が複合的に作用するため、年金制度の持続可能性に疑問符が付けられているのです。
さらに、地域による高齢化の差も顕著になっています。高齢化率は、都市部よりも地方の方が高く、一部の地域では40%を超える自治体も出現しています。この地域格差は、将来の年金制度設計においても考慮すべき要素となるでしょう。
【引用】総務省統計局「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)」2024年4月12日公表
【参考】総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月確定値、2025年(令和7年)3月概算値」2025年3月19日公表
年金支給額の減少の可能性
高齢者が増加し現役世代が減少することにより、年金財源の不足が懸念されています。2024年の財政検証では、経済成長率や出生率が低下することから、将来的な給付水準が低下すると予測されました。
経済成長や出生率の低迷は賃金上昇率の伸び悩みをもたらし、年金原資の担い手である生産人口が減ることから年金の算定基準にも影響を与えるでしょう。
また直接的な支給額の減少だけでなく、受給開始年齢の引き上げによる生涯受給総額の減少も考えられます。
さらに、物価上昇についても見過ごせません。
名目上の年金額が同じでも、物価が上がれば購買力は低下します。例えば、2%の物価上昇が10年続けば、同じ金額の年金でも実質的な価値は約18%も目減りしてしまうのです。
2022年以降の世界的なインフレ傾向も、年金受給者の生活に大きな影響を与えています。
【参考】厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」2024年7月発表
年金問題の今後の見通し
現在の年金制度が抱える課題を踏まえると、将来の見通しについても不安要素が多く存在します。
人口の変化や社会保障制度改正の影響で、年金制度はどのように変化していくのでしょうか。今後の予測を解説します。
現役世代の負担増
内閣府の資料によると、20年後の2045年には日本の総人口は1億880万人まで減少し、さらに35年後の2060年には1億人を下回ることが予測されています。
人口減少と同時に少子高齢化はより深刻化し、年金制度への影響も避けられない状況となっています。
特に心配されるのは、年金の支え手と受給者のバランスです。2045年には現役世代1.5人で高齢者1人を支える形になるという試算もあり、現役世代の負担はさらに大きくなる一方です。
若い世代にとっては、定年までの数十年にわたって高い年金保険料の負担を強いられる可能性があります。
同時に、日本の経済成長が停滞し収入が上がらないまま社会保険料が増加すれば、手取り収入である可処分所得が減少することも考えられます。
生活費や住宅ローン、子育て費用などの支出が変わらない中での可処分所得の減少は、現役世代の生活に大きな影響を与えそうです。
このような状況に対して、政府はいくつかの対策を検討しています。
- 年金受給開始年齢のさらなる引き上げ
- 保険料を納める期間の延長
- 私的年金の普及促進
これらの対策が導入されれば、老後の資金計画を見直す必要が出てくるでしょう。
年金制度そのものが破綻するという極端な事態にはならないまでも、現行の水準や時期に年金を受け取れるとは限りません。
特に今の30代、40代の方は、公的年金に過度に依存しない老後設計が求められます。
【引用】内閣府「令和5年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」2024年6月21日発表
【参考】内閣府「高齢化の現状と将来像」 2025年7月14日現在
【参考】内閣府「将来推計人口でみる50年後の日本」2025年7月14日現在
社会保険料の増加傾向
2025年度の厚生年金保険料率は18.3%です。2000年代の約13%と比較すると大幅な上昇であり、わずか20年で5ポイント以上も上昇したことになります。
現在の制度では、厚生年金の保険料率を18.3%で固定することになっていますが、年金制度の持続可能性を考えると、今後保険料率の引き上げが必要となる可能性も否定できません。
さらに、年金以外の社会保険料についても増加傾向です。
健康保険の料率は国民皆保険が始まった1961年時点では6.3%でしたが、現在は10.0%前後で推移しています。
人口減少と高齢化が進む中で、健康保険制度を維持するための改正が実施されれば、保険料はさらに上昇する可能性があります。
特に高齢者の医療費が増加する中で、現役世代の負担増加は避けられない状況です。
介護保険料の料率も上昇しています。
制度開始当初の2000年は0.60%だったのに対し、現在は1.59%です。料率は25年間で2.6倍にまで上昇しており、今後もさらに上がると予測されています。
団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、介護需要がさらに高まることが予想されるためです。
社会保険料は労働者だけでなく企業も負担しているため、企業にとって人件費の圧迫要因となります。その結果、企業は正社員採用を抑制し、社会保険料負担の少ない非正規雇用の増加や賃金抑制の流れが進む可能性も考えられます。
社会保険料負担増加による雇用環境の変化は、労働環境や賃金の伸びにも悪影響を及ぼし、結果として年金保険料の原資となる賃金総額の伸び悩みにつながるという悪循環を生む恐れもあるのです。
【参考】日本年金機構「厚生年金保険料率の変遷」 2025年7月14日現在
【参考】全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」 2025年7月14日現在
支給額の減額が進行
国民年金の満額支給額は月額約6万8,000円で、ここ10年ほどは横ばいで推移しています。しかし人口減少によって負担する人の数が減れば、今後もらえる年金は実質的に減っていくことが避けられません。
なお、将来の年金財源を確保するために、物価や賃金が上昇しても少子高齢化の進行度合いに応じて年金額の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」という制度が2004年から導入されています。
例えば、物価が2%上昇しても、マクロ経済スライドの調整によって年金額の上昇は0.5%に抑えられるといった形で機能します。
当初このマクロ経済スライドは2023年頃に終了する予定でしたが、最新の財政検証では国民年金の調整が2057年まで続く可能性が示されています。当初の想定よりも30年以上調整が継続されれば、現在の30代、40代の方は老後長い期間にわたってマクロ経済スライドの影響を受けることになります。
さらに、マクロ経済スライドのかけ方をより抑制する方向に変える案も検討されており、年金額は現状よりも減る可能性も見込まれます。
【参考】厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」2025年1月発表
増税
年金を含む社会保障費の増加によって、財源を確保するための増税も避けられない状況となっています。
特に注目されるのは、消費税率のさらなる引き上げです。2019年に10%へ引き上げられた消費税ですが、欧米諸国の税率である15〜25%程度と比較するとまだ低く、将来的には同じ水準の20%前後まで引き上げられる可能性も指摘されています。
消費税以外にも、所得税や資産税の見直しが検討されており、特に高所得層への増税が議論されています。相続税や贈与税の改正も進められており、世代間の資産移転や資産形成への影響が拡大する可能性も考えられます。
特に相続税の基礎控除額の引き下げが実施されれば、一般的な家庭でも相続税の課税対象となるケースが増えるでしょう。
増税によって消費税率が上がると消費が低迷し、景気悪化につながる懸念もあります。実際、2019年の消費税率引き上げ後には消費の落ち込みが見られ、さらにコロナ禍も重なって経済に大きな影響を与えました。
将来的な増税が景気後退をもたらせば、税収減少という皮肉な結果を招く可能性もあります。
また「取れるところから取る」という税制改革が進むと、資産形成途上の世代の生活負担が増すことになります。社会保険料の負担増と増税の両方に直面することになり、可処分所得のさらなる減少を招く恐れがあるでしょう。
結果として消費の低迷や少子化の加速など、社会全体に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
自分で用意する必要性の増加
ここまで見てきたように、年金をめぐる環境は厳しさを増しており、老後資金の準備が欠かせない時代になっています。「公的年金だけでは足りない」という認識は広く浸透しつつあり、自助努力によって資金を確保する必要性が高まっています。
なお資産形成を支援するため、国も様々な制度を整備しています。
例えばiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)は、税制優遇を通じて老後資金の確保を支援する制度として注目され、利用者も年々増加しています。特に2024年からスタートした新NISA制度は、非課税投資枠の拡大や恒久化により、より使いやすい制度となりました。
また、企業型確定拠出年金の普及も進み、働き方や退職金制度の選択肢も広がっています。
老後資金の準備には、多様な資産運用手段を活用することが重要です。株式や債券、投資信託といった金融商品だけでなく、不動産投資など実物資産への投資も選択肢となります。
特に長期の資産形成では、インフレに強い実物資産や株式などへの分散投資が効果的と言われています。
退職金についても、一括受け取りか分割受給かの選択や、受け取った退職金の運用方法など、慎重に検討する必要があります。税金面での影響も考慮しながら、自分に合った選択をすることが大切です。
このように、公的年金制度の先行きが不透明な中で、私たち一人ひとりが老後の生活に向けて主体的に準備することが重要になってきています。次の章では、具体的にどのような対策が効果的なのか、詳しく見ていきましょう。
今からできる年金問題の対策
年金問題に直面する現代では、公的年金だけに頼らない資産形成が重要になっています。
ここでは、さまざまな対策方法とその特徴を説明し、将来に向けた資金準備の第一歩となる情報をお伝えします。
それぞれの制度や手法を理解し、自分に合った選択をする際の参考にしてみてください。
資産形成
老後資金の準備は、早いうちから投資によってお金に働いてもらい資産を形成しておくことが大切です。
早期に開始することで選択肢の幅が広がり、運用経験も積むことができます。資産によっては、長期運用による複利効果も大きく見込めるでしょう。
「貯める」から「増やす」へと発想を転換し、効率的な資産形成を目指すことが将来の安心に繋がります。
続いて、主な資産形成の方法をいくつかご紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは老後の資金作りに特化した制度で、3つの税制優遇があります。
1.掛金が所得控除される
毎月の掛金が全額所得控除の対象となり、住民税や所得税の負担が軽減されます。例えば、年間24万円をiDeCoに拠出すると、所得税率20%の方は約4.8万円の節税になります。
2.運用益が非課税扱いになる
運用益は非課税となるため、複利効果を最大限活用できます。通常の投資であれば利益に税金がかかりますが、iDeCoではその分も再投資に回せるため、長期間の運用で大きな差が生まれます。
3.受け取り時にも税控除が適用される
受け取り時も「退職所得控除」や「公的年金等控除」があり、税負担が抑えられます。一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されるため、状況に応じた受取方法を選択できます。
なおiDeCoは、原則60歳まで資金を引き出せません。引き出しの制限があるのは一見デメリットのように感じますが、強制的に老後資金を確保できるという点ではメリットとも言えます。
ただし、短期的な資金需要には対応できないため、生活費とは別に積み立てることが大切です。
加入できる年齢は60歳未満ですが、制度改正により条件に該当する人は65歳まで延長されています。
掛金の上限は職業によって異なり、会社員や公務員は最大月額2万3,000円、自営業者は月額6万8,000円です。
NISA(少額投資非課税制度)
NISAは投資による利益を非課税で得られる制度です。
通常、投資の売買益や分配金にはおよそ20%の税金がかかりますが、NISA口座での運用は税金が課されません。株式や投資信託による利益を最大限に活かせる制度として、活用価値が非常に高いと言えるでしょう。
特に「つみたてNISA」は、少額から毎月自動的に投資できるため、着実な資産形成が可能です。定期的に固定額を投資することで、相場の上げ下げに左右されにくい「ドルコスト平均法」が自然と実現できることから、初心者でも手軽に分散投資を始められます。値動きの激しい銘柄であっても、コツコツと積み立てることで平均取得単価を抑えられるのです。
NISAは2024年の制度改定により、使い勝手が大きく向上しました。
従来は「一般NISA」と「つみたてNISA」が別枠で設けられていましたが、新制度では併用できるようになっています。年間の投資枠も拡大し、限度額に達するまで非課税で投資を続けられる恒久的な仕組みも導入されました。
具体的には、成長投資枠で年間360万円、つみたて投資枠で年間120万円の投資が可能となり、時間をかけて大きな非課税の恩恵を受けられます。
NISAの大きな特徴は、iDeCoと異なり、いつでも資金を引き出せる点です。将来のライフイベントに対応しやすく、柔軟性の高い資産形成が可能です。
不動産投資
不動産投資は、老後資金対策として優れた方法の一つです。
大きな魅力は、家賃収入を継続的に得られる点にあります。株式のように大きな価格変動がなく、比較的安定した収益が長期にわたって見込めるため、老後の生活を支える収入源として最適です。
また、不動産はインフレに強いという特性があります。物価上昇時は家賃も伴って上がる傾向があるため、資産価値が維持されやすく年金の実質価値低下に備える有効な方法と言えるでしょう。
他にも不動産投資は、少ない資金で大きなリターンを得る「レバレッジ効果」を活用できます。金融機関の融資を活用することで、自己資金の何倍もの資産を運用できるため、効率的な資産形成が可能です。
例えば、1,000万円の自己資金と2,000万円の融資で3,000万円の物件を購入すれば、家賃収入で住宅ローンを返済しながら資産を築けます。
税制面でも不動産投資は優遇されています。減価償却や経費計上による節税効果があり、本業の給与所得とあわせた所得税の負担を軽減できるのです。特に高所得の方にとっては、効果的な節税対策にもなるでしょう。
さらに、立地の良い物件を取得すれば、資産価値の維持・向上も期待できます。不動産は実物資産であるため、適切に管理や運用をすることで価値を保ちやすく、次世代への資産継承も視野に入れた長期的な資産形成が見込めます。
本業の給与に家賃収入を加えることで、収入源のリスク分散ができる点も注目されています。万が一の失業や収入減少時にも経済的な安定を図る手段として、会社員や公務員の方にも人気です。
物件選びや管理会社の選定などは、適切な知識と判断が求められますが、しっかりと準備をすれば、老後の安定した収入源として大きな力となるでしょう。
NISAと不動産投資を組み合わせて対策した場合のシミュレーション
老後資金対策として「NISA」の複利効果と「不動産投資」のレバレッジ効果を組み合わせた運用例をご紹介します。
手持ちの資金はNISAで着実に増やしつつ、金融機関からの融資を活用し不動産投資を行うことで、少ない自己資金でも効率的に資産形成ができる方法です。
以下は、35歳・年収500万円の会社員Aさんのケースです。
【不動産投資の概要】
- 築10年の中古区分マンション(1K・30㎡)
- 購入価格: 1,200万円
- 頭金: 200万円
- ローン: 1,000万円(金利1.5%、35年返済)
- 月々のローン返済額: 約31,000円
- 家賃収入: 月額65,000円
- 諸経費(管理費、修繕積立金、保険、税金など): 月額15,000円
【不動産投資の月間収支】
- 月間収入: 65,000円(家賃)
- 月間支出: 46,000円(ローン返済31,000円+諸経費15,000円)
- 月間キャッシュフロー: +19,000円(年間で約22.8万円の不労所得)
【NISAの運用計画】
- NISA積立額: 月額25,000円
- 想定利回り: 年3%(複利)
- 投資期間: 35年間(35歳〜70歳)
【35年後の資産形成予測】
不動産資産:
物件価値: 当初の購入価格の70%程度と仮定すると約840万円
35年間の不動産からの純収益: 約798万円(月18,000円×12ヶ月×35年)
NISA投資:
35年間の積立総額: 約1,050万円(月25,000円×12ヶ月×35年)
35年後の運用資産: 約1,800万円(年利3%の複利計算)
【合計資産形成効果】
不動産物件価値: 約840万円
不動産純収益累計: 約798万円
NISA運用資産: 約1,800万円
総資産形成効果: 約3,438万円
このシミュレーションでは、当初の投資元本(不動産頭金200万円+NISA積立1,050万円=1,250万円)の約2.7倍の資産形成に成功しました。
さらに、35年後以降も家賃収入が継続して得られるため、ローン完済後は毎月約50,000円の安定した収入を確保できます。
NISAと不動産投資を組み合わせた運用の大きなメリットは、リスク分散です。NISAでは主に株式や投資信託などの金融資産に投資することで市場の成長を享受し、不動産投資では実物資産を保有することでインフレリスクにも対応できます。
また、不動産投資で生じるキャッシュフローは、万が一の相場下落時にも安定した収入として頼りになります。
このようにNISAと不動産投資を賢く組み合わせることで、月々の負担を最小限に抑えながら、リスクを分散しつつ約3,000万円以上の資産を形成することが可能です。
老後資金対策として検討する価値のある戦略と言えるでしょう。
貯蓄
投資に不安を感じる方や安全性を重視したい方は、まずは貯蓄から始めましょう。貯蓄があまりできていない人は、毎月の収入から一定額を貯蓄へ回す習慣をつけてみてください。給与が入ったら、決めた金額を別の口座に移す「先取り貯蓄」の仕組みを取り入れると効果的です。
まずは無理のない範囲で定期的な貯蓄習慣を身につけることが、将来の資産形成の土台となります。
貯蓄の基本となるのが定期預金です。定期預金は安全性の高い資産形成手段として、次のようなメリットがあります。
- 元本保証があるため、リスクを抑えて資産を守れる
- 事前に金利や運用期間が決まっているため、将来の資金計画を立てやすい
- 預入期間を短期・中期・長期から選べるため、ライフプランに合わせた運用が可能
- 万が一金融機関が破綻しても、1,000万円までの元本と利息が保証される預金保険制度(ペイオフ)がある
ただし、現在の低金利環境では定期預金だけでのリターンは限定的です。2025年現在、メガバンクの1年もの定期預金金利は0.275%程度と低水準に留まっています。
定期預金は安全性が高い反面、資産増加の効果は限られるため、他の運用手段と組み合わせて活用することが重要です。
例えば、「緊急資金として1年分の生活費を定期預金で確保し、余裕資金をNISAなどで運用する」といった組み合わせが効果的でしょう。
年金額を増やす
年金対策として、受給額そのものを増やす方法もあります。
主な方法は次の3つです。
- 年金の繰り下げ受給
- 付加年金制度の活用
- 私的年金の利用
具体的に見ていきましょう。
年金の繰下げ受給
年金は受給開始時期を遅らせることで、受取額を増やせます。
「繰下げ受給」は1カ月繰下げるごとに0.7%増額され、1年で8.4%増やすことが可能です。
繰り下げができる上限の75歳まで繰下げると、65歳受給開始時と比べて年金額は84%増加します。65歳時点で月額15万円の年金が、75歳では月額27.6万円になる計算です。
高齢者の就労が増加する現代では、65歳以降も働く人が増えています。そのため、収入があるうちは年金の受給を繰下げる選択を検討する価値があるでしょう。
特に健康で長生きする可能性が高い方にとっては、後期高齢者以降の生活水準を高める有効な手段となります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げは、個別に選択が可能です。例えば、老齢厚生年金のみ65歳から受給し、老齢基礎年金を75歳まで繰下げることもできます。
このような柔軟性を活かして、自分のライフプランに合わせた受給設計を考えることもできます。
繰下げ受給を検討する際は、自身の健康状態や家族の寿命傾向、他の収入源の有無などを総合的に考慮することが大切です。ライフプランに合わせて柔軟に受給開始時期を決めることで、老後の経済的安定を図りましょう。
付加年金制度の活用
付加年金制度は、国民年金第1号被保険者の方(自営業者、フリーランス、学生など)が利用できる制度です。
国民年金保険料に加えて月額400円を追加負担することで、受給時に「200円×納付月数」の年金が上乗せされます。30年間加入すれば、144,000円の保険料負担で年72,000円の年金増額です。単純計算すると約2年で元が取れる計算となり、投資効率が非常に高いとされています。
定額で確実にリターンが得られるため、自営業者・フリーランスの方にとって有利な制度と言えるでしょう。
付加年金は加入期間が長いほど受給額を増やせるため、若い時期からの加入がより大きなメリットをもたらします。例えば、25歳から60歳まで35年間加入した場合、168,000円の負担で年額84,000円の年金が増加します。
仮に65歳から85歳まで受給すると、総額168万円のリターンになるのです。
手軽に年金を増やせる確実な方法として、国民年金第1号被保険者の方は検討してみても良いでしょう。
私的年金の利用
生命保険会社や金融機関の個人年金保険も、老後の収入を増やす有効な方法です。
個人年金保険は、一時金・終身年金・確定年金など多様な受取方法を選べるため、自身のライフプランに合わせて設計できます。
また保険料は「一般生命保険料控除」または「個人年金保険料控除」の対象となり、税制優遇があるのも魅力です。
個人年金保険には、大きく分けて定額型と変額型の2種類があります。定額型は、あらかじめ決められた利率で運用され、将来受け取る年金額が契約時に確定します。一方、変額型は運用成果に応じて受取額が変動するため、高いリターンが期待できる反面、元本割れのリスクもあります。
個人年金保険は、中途解約すると支払った保険料より解約返戻金が少なくなる可能性もあります。
特に契約初期は返戻金が低くなる傾向があるため、長期間継続できる保険を選ぶことが重要です。
払い込みを続けられる保険料であるかを十分に検討した上で、老後の収入を補完する手段として活用することをお勧めします。
まとめ
この記事では、年金制度の現状と今後の見通しについて解説してきました。
将来年金は少子高齢化に伴って、給付水準の低下や受給開始年齢の引き上げとなる可能性があります。
また、社会保険料の増加や増税など、現役世代の負担が大きくなることも想定されます。
このような状況に備えるため、早い段階から自助努力で資産形成を行う必要性はますます高まるでしょう。
年金問題は「遠い先のこと」ではなく、今から対策を始めるべき課題です。公的年金だけに頼らず、早い段階から将来の資産準備を検討し行動に移しましょう。
資産形成の方法としては、NISAやiDeCoの活用や不動産投資、付加年金制度や私的年金の活用など、様々な選択肢があることを紹介しました。
特に不動産投資は、安定した収入を得られる有効な選択肢の一つです。正しい知識と戦略を持って取り組めば、老後の収入源となる可能性を秘めています。
ベルテックスでは、不動産投資による資産形成についての無料セミナーを定期的に開催しています。ご自宅からオンラインで気軽にご参加いただけますので、資産形成に関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。